試練を乗越え前進せよ

メッセージ

<創世記 16章1~16節>
牧師:徳本 篤 師

開会聖句

むしろ、耐えられるように、試練とともに脱出の道も備えてくださいます。

<コリント人への手紙第一 10章13節>

メッセージ内容

本論)
今日の聖書個所で、アブラムは85歳になり、サライは75歳になっていました。子どもが与えられることを期待している夫の思いが強いことを分かっていただけに、サライにとって、自分がそれに応えてあげられないことで、どれほど苦しみ悩んだことでしょう。長い間考えた末に、もうこの他に道はないと思いついたことは、自分の女奴隷エジプト人ハガルを代理妻として夫に与え、それによって子どもをもうけることでした。彼ら生きていた当時のメソポタミア地方の法律では、そのようにして生まれた子どもは、奴隷の主人の子どもとして公に認められていました。

ところで、アブラムは妻サライからこの計画を聞いた時に、なぜかそれを思い留まらせようとしませんでした。さらに不思議なことは、神もまたアブラムとその妻が選んだ方法を責められている場面は見当たりません。それどころか、女奴隷ハガルをやさしく励まされ、サライのもとで身を低くするように説得されました。驚くことに、生まれてくる子どもにはイシュマエルという名を与えて、母と子の将来を祝福されています。

イスラム教では、イシュマエルのことを神と神の御使いからの特別な加護のあった母子として神聖視されています。例えば毎年行われる聖都メッカでの大巡礼(ハッジ)におけるザムザムの泉への往復の行事は、荒野に追われたハガルとイシュマエル母子を追体験するものとされています。イシュマエルは聖書の中で、より大きな役割を占めており、預言者または犠牲の子として崇拝されています。

イスラム教の伝承では、アブラムは息子イシュマエルとともに、シナイ半島を行き巡り、現在のイスラム教の聖都メッカまで来て、カアバ神殿を再建したという伝説が残されています。イスラム教ではイシュマエルの子のアドナンが、後の預言者ムハマンド(マホメッド)の祖先ということになっています。

洞察)
さて、今日の聖書の中心人物は信仰の父アブラムではなく、献身的で賢明な妻サライでもありません。
今日多くの説教者がこの聖書箇所から、アブラムの優柔不断さを責め、サライの勇み足を責めて、まるでこの夫婦が弱さのゆえに不信仰に陥って失敗したかのように捉えて、これを教訓にするように語ります。
しかし、聖書にはそのような記述はどこにもありません。私たちの目には神の約束を信じているがゆえにともに悩み苦しむ夫婦の姿が見えています。私たちはそれから13年後にイサクが生まれる事実を知っているからアブラムとサライを責めるのです。この二人にもそれが分かっていたならどうして女奴隷によって自分たちの問題を解決しようなどと考えるでしょうか。信仰の特徴は、自分がまだ見ていないものを信じて歩み続けることです。その意味では、アブラムもサライも決して特別な人ではありませんでした。それでも、アブラムが私たちの信仰の父であることには何ら変わりがありません。同じ信仰の生涯を歩み続ける者にとって大きな励ましです。神がこの夫婦の行為を責めておられる形跡が見られないところがその証拠です。

したがって、今日の聖書箇所の中心人物は、サライの女奴隷エジプト人ハガルという女性だということになります。 ヘブル語でハガルは「逃亡者」という意味です。それは彼女の本名であったかは不明です。彼女はエジプトでも以前の女主人のもとから逃亡した経歴があったからだと考える聖書学者もいます。 
彼女は自分がアブラムの子どもを身ごもったことが分かると、態度が横柄になり、女主人であるサライを見下げるようになりました。当然のことですが、サライはそのような変化に憤りを感じたことでしょう。その結果、アブラムはサライからの厳しいいじめを容認しました。ハガルはその辛さに耐えきれなくなって、またもや女主人のもとから逃亡を決意しました。

そのときに、主の御使いが彼女に言った言葉に注目してください。

1)「あなたの女主人のもとに帰りなさい。そして、彼女のもとで身を低くしなさい。」(9節)
2)「あなたの子孫は、わたしが大いにふやすので、数えきれないほどになる。」(10節)
3)「見よ。あなたはみごもっている。男の子を産もうとしている。その子をイシュマエルと名づけなさい。主があなたの苦しみを聞き入れられたから。(11節)

私は11節を読みながら、主の御使いが乙女マリヤに神の御子イエスの受胎告知する場面を思い起こしていました。さらに「主があなたの苦しみを聞き入れられたから」ということばに、とても励まされます。主の慰めが心に響きます。ハガルは強い女性でしたが、周囲の者と協調することが下手で、跳ねっ返りの性格、集団では問題の人でした。それでも神は、ハガルに対して優しく振る舞われ、ひとりの母親として尊敬されたことを私たちは忘れてはなりません。

適用と応答)
ですから今日、ハガルのように、自分の不器用さや性格のことで悩み、人間関係で苦しみを感じ、あるいは困難な状況に立たされている人に、ぜひとも注目していただきたい言葉があります。それは御使いが「あなたの主人のもとに帰りなさい。そして、彼女のもとで身を低くしなさい。」語ったことです。

今日の説教のテーマは、「苦難を乗り越え前進せよ」ということですが、乗り越えていく秘訣がここにあります。その場から逃げ出すことではなく、自分で何とかしようと、もがくことでもありません。

主の励ましのことばを受け入れてください。主があなたの将来のために備えてくださっている祝福を信じてください。そして、その場に留まり続け、主に身を任せることです。 今日のみことばをから、自分の喜びと平安を見失わない最善の道であると確信できた人は幸いです。

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新聖歌

開会祈祷後:145番、メッセージ前:457番、メッセージ後:299番

聖書交読

詩篇 96篇1~13節

お知らせ

★本日の礼拝開始時間は午前11時からです。
★本日午後3時から新年聖会が武庫川教会にて行われます。
★今週4日(水)の水曜祈祷会は休みます。
★1月度の聖餐式は次週8日(日)礼拝後に行います。
★教団仮事務所および神学校仮校舎は下記の場所に移転しました。
〒563-0032池田市石橋3-7-15

#49-2535

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