ダビデ王の遺言

    令和5年5月8日(月)より新型コロナウイルス感染症が5類感染症へ移行することに伴い、礼拝での規制を緩和します。具体的には、会衆讃美は全節歌唱する、省略していた聖書交読を復帰し、司会者朗読→会衆朗読を交互に行います。
    なお、礼拝中のマスク着用は引き続き推奨、「平和の挨拶」の握手の自粛は今後も実施しますので、ご理解とご協力を宜しくお願いいたします。

    メッセージ

    <列王記 第一 2章1~12節>
    牧師:砂山 智

    開会聖句

    それはからし種に似ています。ある人がそれを取って自分の庭に蒔くと、成長して木になり、空の鳥が枝に巣を作りました。

    <ルカの福音書 13章19節>

    メッセージ内容

    Youtube動画

     公開が大変遅れて申し訳ありません。
    メッセージ動画公開:9/9 PM 10:33


    メッセージ原稿を公開しました。  

    <序論>  
    ・「列王記」には、ダビデ、ソロモン、そして、北イスラエルと南ユダに分裂した後の歴代の王についての在位の年数、それぞれ治世に対する短い評価、王の死と王位の継承などが記されています。分裂後の北イスラエルの王については、すべて「彼は主の目に悪であることを行い」とか、「ネバテの子ヤロブアムの道に歩んだ」という厳しい評価が下されているのに対して、南ユダの王に対しては「高き所(偶像)」の礼拝についての態度が問われているだけというのが対照的と言えるでしょう。また、元々、「Ⅰ列王記」「Ⅱ列王記」「サムエル」と同様に一つの書簡でしたが、ギリシア語訳旧約聖書(七十人訳)が作られた時に二つに分けられたようです。それは、巻物の長さに限度があったからだと言われています。「Ⅰ列王記」は、ダビデの最晩年から始まり、その死とソロモンへの王位の継承、そして、栄華を極めたと言われるソロモンの時代を経て、王国が北と南に分裂した経緯と、その後の幾人かの王の時代について記しています。この「Ⅰ列王記」の記事で特によく知られているのは、やっぱり、あの預言者エリヤとバアルの偽預言者たちとの対決の場面ではないでしょうか。それは18章ですね。
    今朝は2章から、「ダビデ王の遺言」と題して、皆さんとともにみことばに耳を傾けたいと願っています。

    <本論>
    ダビデの人生

    ダビデは、初代の王サウルが死んだ後、30歳で王となり、40年間、イスラエルを治めました。1章前半には、そのダビデの最晩年の姿が描かれています。それは本当に、かつての若かりし頃の、あの凛々しいダビデの姿からは程遠いと言うか、見る影もない姿でした。ダビデに限らず、年を取れば誰もがそうなるのかもしれませんが、他の多くの方々も指摘しているように、私は、このダビデの姿こそ、彼が歩んできた人生の厳しさを何よりも物語っているように感じました。ダビデの人生は戦いの連続でした。ペリシテ人との戦いに始まり、先代の王サウルの激しい妬みによって何度も命を狙われ、王になってからも息子アブサロムの反乱に遭い、惨めな姿で都落ちせざるを
    得なかったこともありました。また、家来の妻バテ・シェバのことで恐ろしい罪を犯し、預言者ナタンからの指摘によって悔い改めはしましたが、その時の苦い思い出は、生涯、心のどこかに残り続けたのではないでしょうか。もちろん、たとえそうであったとしても、ダビデは最後の最後まで主に従い通したと言うか、しがみついて離れなかった。それが彼の信仰者としての素晴らしさであるということは誰もが認めるところなんですが、それと同時に、私は、ダビデのそのような生涯を思った時、ある人のことばが浮かんできたんです。それは、ライフネット生命の創業者で立命館アジア太平洋大学学長の出口治明という方のことばなんですが、「人生の豊かさは喜怒哀楽の総量で決まる」という。私たちは普通、喜怒哀楽の内、喜と楽だけを求めます。怒や哀はできるだけ避けようとしますし、そんなものは人生にとって価値がないと言うか、ただマイナスだけだと考えてしまいますが、そうではなくて、怒も哀も含めた全部・総量が、その人の人生の豊かさだと、出口さんは言うんですね。まぁ、これは後から振り返ってみてということかもしれませんが、ダビデがあのように多くの素晴らしい「詩篇」を残せたというのも、そのような人生を歩んだからこそ、と言えるのではないかと思わされました。

    ヨアブ、バルジライ、シムイ

    そして、1章の後半には、息子アド二ヤの王位簒奪未遂事件が記されています。アド二ヤはダビデの四男でしたが、兄たちは既に亡くなっており、この時点で彼が一番の年長者でした。だから野心を抱いたのだと思いますが、その企ては、預言者ナタンとバテ・シェバによって阻止されます。長くなりますので、その経緯についてはこれ以上触れませんが、1章13節のナタンからバテ・シェバへの助言、そして、17節のバテ・シェバのことばにあるように、ダビデはソロモンを自分の跡継ぎにすると誓った誓いを破ることなく(聖書にその誓いの記録はないのですが)、ソロモンを次の王とするのです。
    そして、ダビデがいよいよ死なんとするその時、ソロモンに残したことば、遺言が、今朝、読んでいただいた箇所に記されていました。冒頭、2節の「あなたは強く、男らしくありなさい」ということばは、王であると同時に勇敢な戦士であったダビデらしいことばだと思うのですが、やはり彼が一番言いたかったことは3~4節のことばだったと思います。

    『あなたの神、主への務めを守り、モーセの律法の書に書かれているとおりに、主の掟と命令と定めとさとしを守って主の道に歩みなさい。あなたが何をしても、どこへ向かっても、栄えるためだ。そうすれば、主は私についてお告げになった約束を果たしてくださるだろう。すなわち『もし、あなたの息子たちが彼らの道を守り、心を尽くし、いのちを尽くして、誠実にわたしの前に歩むなら、あなたには、イスラエルの王座から人が断たれることはない』』(Ⅰ列王2:3~4)。

    これはダビデが、ただ頭の中だけで考えて残したことばではなく、彼の人生そのものと言うか、生き様そのものをことばにして残したものであったように思えます。そして、その後で、三人の人物に関する遺言があるんですが、5節のツェルヤの子ヨアブ、7節のギルアデ人バルジライ(の子たち)、そして8節のベニヤミン人ゲラの子シムイですね。その中で、特にヨアブとシムイに関しては、それぞれ粛正する(殺す)ようにと命じています。ヨアブはダビデの軍団の長、将軍で、言わばダビデとともにその手足となって戦ってきた人物でした。ただ、彼は、1章のアドニヤの反乱の際にもアドニヤ側についたように、晩年はダビデと疎遠になっていたみたいです。また、シムイですが、彼についてはとても印象的な事件が「Ⅱサムエル」に残されています。それは、8節で言及している通り、かつてダビデが息子アブサロムの謀反に遭い、惨めな姿で都を追われた時に、さらに追い打ちをかけるようなことばで呪ったという事件でした。ただ、ダビデは、その場でシムイに報復しようとした部下に向かって、「放っておきなさい。主が彼に命じられたのだから」と制止し、後になってシムイが詫びを入れに来た時も、「おまえを剣で殺すことはない」と誓ってるんです。それなのに、

    『しかし今は、彼を咎のない者としてはならない。あなたは知恵の人だから、どうすれば彼の白髪頭を血に染めてよみに下らせられるかが分かるだろう。」』(同2:9)。

    なぜ、ダビデは、シムイに復讐するようにという遺言を残したのでしょうか?何か、あのダビデも、やっぱり根に持っていたのかなぁ、と思ってしまうのですが、どうでしょうか?この遺言には様々な解釈が可能かと思いますが、私は、このことばは、そういうダビデの個人的な感情というよりも、自分の跡継ぎであるソロモンのため、その治世を安定させるために、少しでも早く危険の芽は摘みとっておきたいという、彼の政治家としての冷徹な判断、言わば、非情さゆえのことばかな、と思わされました。

    <結論>
    そして、この遺言のうち、今お話しした部分については、ダビデの死後、ソロモンによって実行に移されます。そのことは2章28節以降に記されています。ソロモンにしてみれば、それはあくまでも亡き父ダビデ王の遺言だから、自分はただそれに従っただけで、自分の責任ではない、という言い訳もできたでしょう。しかし、もっともっと大切な前半の部分、3~4節の遺言はどうだったでしょうか?残念ながら、それらの遺言は守られることはなかったのです。そのことを思う時、今朝の箇所の最後と2章の最後にある、

    『その王位は確立した』『こうして、王国はソロモンによって確立した』(Ⅰ列王2:46b)

    ということばにも、何か危うさというものを感じるんです。
    今朝の開会聖句はイエス様がご自分の国、神の国をたとえで説明されたみことばです。ただ、過去の歴史を振り返った時、また目の前にある現実を見た時に、本当に複雑な思いが心の中に湧き上がって来るのですが、神の国は、私たち人間の思いを遥かに超えて、神ご自身が生長させてくださるのです。その約束を信じて今週も歩み続けたいと思います。

    メッセージ内容のダウンロード(PDF110KB)

    新聖歌

    開会祈祷後:211番、メッセージ後:190番

    聖書交読

    詩編15篇 1~5節

    2023年教会行事

    9月6日(水)  オリーブいきいき百歳体操 10~11時

    #55-2884

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