権威と権力 ヤロブアムの道

    令和5年5月8日(月)より新型コロナウイルス感染症が5類感染症へ移行することに伴い、礼拝での規制を緩和します。具体的には、会衆讃美は全節歌唱する、省略していた聖書交読を復帰し、司会者朗読→会衆朗読を交互に行います。
    なお、礼拝中のマスク着用は引き続き推奨、「平和の挨拶」の握手の自粛は今後も実施しますので、ご理解とご協力を宜しくお願いいたします。

    メッセージ

    <列王記 第一 12章19~30節>
    牧師:砂山 智

    開会聖句

    彼は、自分で勝手に考え出した月である第八の月の十五日に、ベテルに造った祭壇でいけにえを献げた。このように、彼はイスラエルの人々のために祭りの日を定め、祭壇でいけにえを献げ、香をたいた。

    <列王記 第一 12章33節>

    メッセージ内容

    Youtube動画


    メッセージ動画公開:10/1 PM 4:16


    メッセージ原稿を公開しました。  

    <序論>  
    ・3年前の11月の礼拝で、「Ⅱ歴代誌」から何回かに分けて話しましたが、その際に、ソロモン王の死後、イスラエル王国が北と南に分裂した経緯について取り上げました。今朝のテキストの冒頭のことば「このようにして」というのは、その経緯、ソロモンの後継者のレハブアムの対応のまずさが原因となって王国は分裂したということです。そして、その背景には、当時のイスラエルにおける南北問題がありました。最近、よく「グローバルサウス」という言葉を耳にします。一般に新興国や途上国の総称として使われる言葉です。その多くが南半球に位置していることからサウス(南)で、インドなどがその代表的な国とされていますが、今朝の時代のイスラエルは、言わば「グローバルノース」と言えばいいのかもしれません。北の十部族はソロモン王が課した思いくびき(税)によって苦しんでいたわけです。ダビデやソロモンは南のユダ族でしたので、自分の部族を優遇したのですね。その不公平感・不平不満が王国分裂の大きな引き金となりました。そして、もう一つ、先週の「どうする家康」を見ていて改めて思ったのですが、やはり女性の影響力は大きいなと。お市の方を演じた北川景子が茶々(淀君)をダブルキャストで演じることには、「やっぱり」という感じでしたが、結局、そんな女性たちが歴史を動かしてきたのではないか、と改めて思わされました。前回のメッセージでもお読みしましたが、

    『彼(ソロモン)には、七百人の王妃としての妻と、三百人の側女がいた。その妻たちが彼の心を転じた』(Ⅰ列王11:3)。

    そして、王国が分裂した後、北イスラエル初代の王となったのが、今朝の主人公ヤロブアムです。

    <本論>
    1.アヒヤの預言

    ヤロブアムとは「民は増す」という意味だそうですが、彼は、ヨルダン渓谷にあったツェレダの出身で、若い頃、その手腕と勤勉さをソロモンに認められ、ヨセフの家(エフライム)の役務の全ての管理者に任じられます。そして、ある時、シロ人の預言者アヒヤから思いもよらぬことを告げられます。少し前の11章29節からご覧ください。

    『そのころ、ヤロブアムがエルサレムから出て来ると、シロ人で預言者であるアヒヤが道で彼に会った。アヒヤは新しい外套を着ていた。彼ら二人だけが野にいた。アヒヤは着ていた新しい外套をつかみ、それを十二切れに引き裂き、ヤロブアムに言った。「十切れを取りなさい。イスラエルの神、主はこう言われる。『見よ。わたしはソロモンの手から王国を引き裂き、十部族をあなたに与える。ただし、ソロモンには一つの部族だけ残る。それは、わたしのしもべダビデと、わたしがイスラエルの全部族の中から選んだ都、エルサレムに免じてのことである。というのは、人々がわたしを捨て、シドン人の女神アシュタロテや、モアブの神ケモシュや、アンモン人の神ミルコムを拝み、父ダビデのようには、わたしの目にかなうことを行わず、わたしの掟と定めを守らず、わたしの道に歩まなかったからである。しかし、わたしはソロモンの手から王国のすべてを取り上げることはしない。わたしが選び、わたしの命令と掟を守った、わたしのしもべダビデに免じて、ソロモンが生きている間は、彼を君主としておく。わたしは彼の子の手から王位を取り上げ、十部族をあなたに与える。彼の子には一つの部族を与える。それは、わたしの名を置くために選んだ都エルサレムで、わたしのしもべダビデが、わたしの前にいつも一つのともしびを保つためである。わたしがあなたを召したなら、あなたは自分の望むとおりに王となり、イスラエルを治める王とならなければならない。もし、わたしが命じるすべてのことにあなたが聞き従い、わたしの道に歩み、わたしのしもべダビデが行ったように、わたしの掟と命令を守って、わたしの目にかなうことを行うなら、わたしはあなたとともにいて、わたしがダビデのために建てたように、確かな家をあなたのために建て、イスラエルをあなたに与える。このために、わたしはダビデの子孫を苦しめる。しかし、それを永久に続けはしない。』」(Ⅰ列王11:29~39)。

    このことを知ったソロモンはヤロブアムを殺そうとしますが、彼はエジプトに逃れます。ソロモンの死後、先程も申し上げましたように、後継者のレハブアムの対応に怒った十部族は、ついにダビデの家に背き、ヤロブアムを北イスラエルの王として、アヒヤの預言は現実のこととなるのです。

    2.ヤロブアムの不安と焦り

    聖書にはそこまで書かれていないのですが、もしかしたら、ヤロブアムも当初は、自分を王にしてくれた神のことば(アヒヤの預言)に従って、神の目にかなうことを行い、主の道に歩もうと思っていたのかもしれません。しかし、今朝のテキストにあったように、彼の心に不安が湧き上がってくるんですね。それは26~27節にあった通りなんですが、彼は、その不安を取り除くため、シェケムとぺヌエルを再建し、金の子牛二つを造り、それをぺテルとダンに置きます。シェケムとは、アブラハムのカナンにおける最初の滞在地であり、ヤコブやヨセフともゆかりの深い土地です。ヤロブアムの祖先にあたるヨセフの遺骸はエジプトから運び出され、シェケムに葬られたと記録されています(ヨシュ24:32)。ヤロブアムは、北イスラエル建国後、しばらくの間、そのシェケムを都としますが、間もなくして南ユダからの攻撃を恐れ、都をぺヌエルに移し、さらにティルツァに移します。そして、金の子牛が置かれたというぺテルとダンは、北イスラエルの最南端と最北端に位置します。それは28節のヤロブアムのことばにあったように、もう自分の国の人々が礼拝のためエルサレム神殿まで上る必要がないようにするためでした。ということは、王国が分裂した後も、しばらくの間、北の人々はエルサレム神殿への巡礼を続けていたということになります。つまり、政治的には北と南に分かれたにも関わらず、エルサレム神殿は依然として全イスラエル共通の宗教的権威の象徴・中心地と考えられていたのです。それは、そこにイスラエル十二部族の聖所を意味する契約の箱が置かれていたからです。ヤロブアムは、政治的には権力を握って人心を掌握することができたけれども、宗教的には掌握しきれていなかったわけで、それが彼の心に焦りを生じさせたのではないかと思います。
    今朝の説教の題は「権威と権力 ヤロブアムの道」としましたが、私たちの国では、戦後、日本国憲法によって「象徴天皇制」というものが採用されました。それは、ある意味、権威と権力を分離することでした。憲法前文には次のように書かれています。

    「…ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。」

    <結論>
    ヤロブアムの時代には、もちろん主権在民などなく、王一人が権力を握っていました。ただ、それも、あくまで十部族の合意の上に成り立っていた権力でしたし、先程もお話ししたように、いつ民の心が神殿のある南ユダの下に帰るかもしれないという大きな不安も抱えていましたが。その不安、焦りが、ヤロブアムの心に、本来、神にのみ帰すべき権威まで手に入れたい、自分のものにしたいという、邪(よこしま)な思いを芽生えさせたのです。
    今朝の開会聖句には、「彼は、自分で勝手に考え出した月である第八の月の十五日に」とあります。ヤロブアムは、まさしく、自分勝手に祭儀を執り行い、レビ族に連なる祭司にしか許されていなかったはずの、いけにえを献げ、香をたいたのです。いつの時代も、権力者・独裁者は自分の地位を守るため、さらに、自分の心にある不安をかき消すために、権威をも手に入れようとします。今の中国や北朝鮮なんかを見ていると、それがよく分かります。そして、残念ながら、キリスト教の長い歴史の中においても見られたことです。私たちは、そのことを忘れることなく、真の権威を持っておられる方は、父、御子、御霊の神だけであると告白しつつ、歩んで行きたいですね。

    メッセージ内容のダウンロード(PDF106KB)

    新聖歌

    開会祈祷後:102番、メッセージ後:145番

    聖書交読

    詩編20篇 1~9節

    2023年教会行事

    10月4日(水)  オリーブいきいき百歳体操 10~11時

    #55-2888

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